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    STORY

     

    過激派組織の一員・タガミナオ。

     

    腕っぷしも強く、狙撃の腕も一流だが、単純な性格のためか長年、泥仕事ばかりだった。

     

    そんなナオに組織が出した指令は“オウサマ”の狙撃。

     

    組織からの信頼故に大役を任されたと信じるナオに、師である義父に預けていたひとり息子・コマが同行する。

     

    男らしさ、思想、歴史、母親への幕情――

    さまざまな想いに、いつしか心を通わせていく父親と息子。

    そんな初々しいふたりに訪れたのは衝撃の結末だった――。

     

     

  • INTRODUCTION

     

    内山拓也監督『佐々木、イン、マイマイン』(2020)、『ヴァニタス』(2016)で活躍、最も“今”である若手俳優とされる野川雄大と、東京国際映画祭招待作品『Blue Symphony~ジャック・マイヨールの愛した海』(2009)、World Gate Film Festivalグランプリ『瞬間少女』(2013)、時代劇『維新烈風 天狗判官』(2018)など、数々の作品を世に送り出したコンテンツ機関である公野研究室が組んで、6年の歳月をかけて完成させた感動巨篇。

     

    最も先鋭的な話題俳優・野川雄大×トライアルで伝統的な映画制作の公野研究室

     

    テロリストは妻に、トミノアニメ好きな小学生は母に、それぞれが片思いをする父子。

     

    長く離れていた父子がたった一日だけ、二人だけの旅に出る。

     

    目的は――「オウサマ」の狙撃。

     

    不器用で無垢な親子を襲う、容赦のない爆炎。淡く、しかし鮮烈な父子の絆の物語。

     

    天皇、社会、教育、歴史、文化、音楽、思想、トミノアニメ、ウルトラ特撮――さまざまな“日本”がこの映画のいたるところに散りばめられ、たった一本の、たったふたりだけの物語を緻密に紡いでいく。

     

    父子の慕情を無惨にも破壊の炎が包み込む、衝撃のラスト。家族への思いと言葉が現代を照射する、涙と情愛の82分。

     

    内山監督作品にとどまらず、天野千尋『うるう年の少女』(2016・サンフランシスコインディペンデント映画祭)、吉田光希『トーキョービッチ,アイラブユー』(2013・第14回 東京フィルメックス コンペティション部門スペシャルメンション受賞)でも評判を呼び、福田雄一のTBSドラマ『天魔さんがゆく』(2013)の好演の他、From Eastなどのミュージックビデオでも主演を務め、本多劇場グループ 製作の『演劇の街をつくった男』(2020・脚本・演出:徳尾浩司)を始めとする様々な舞台でも活躍する野川雄大が、多くの新人映画を制作してきた公野研究室の若手スタッフたちとコラボレーション、前衛的かつ伝統主義的な映像表現に挑んだ。

    新しいクリエイターの発掘と育成、活躍の場を提供する事を目的として公野研究室は発足したが、これまでも多くの団体からの要請により、ドキュメンタリーを始めとして現代劇や時代劇の映画を制作してきた。しかし当作は、公野研究室スタッフがはじめて自分たち自身の企画として制作した作品となる。

     

    野川のために脚本は書き下ろされ、徒弟制度の外となる新人スタッフたちによって現場は編成され、ほぼ全員がボランティア的に撮影に参加、その後、映像の補整と整音に年月は費やされた。

     

    もともとは限定された場所での上映を企図していた為、劇中で語られる富野由悠季監督の名前を始めとして、国民的アニメーションシリーズ『機動戦士ガンダム』(1979)から引用したワードは脚本から修整されることなく撮影されたが、劇場公開に際して権利元から「教育を前提とした配慮」により特別な許諾を受け、ここに劇場公開が確定した。

     

    その他にも監督の古巣となる円谷プロダクションの人気特撮作品や、映画の師匠となる髙木隆太郎の製作作品『沖縄列島』(1969・東陽一監督)へのオマージュなど、研究室を支えてきた数々のソリューションが作品世界を支える。

     

    腋を固めるのは、舞台『コードギアス 騒乱 前夜祭』やミュージカル『忍たま乱太郎 PART2』、TVドラマ『新宿鮫』(2002・NHK)、『茂七の事件簿〜ふしぎ草紙』(2002・NHK)、『シリウスへの道』(2008・WOWOW)などで活躍する松嶋創。

     

    彼の役となるヒットマン、マツシマも充て書きされたものである。インタミッション的に登場する彼のシーンは必見である。

     

    テーマ曲はTakajii。小柳ゆきや川嶋あい、angelaなどの名だたる歌手たちの楽曲制作に参加してきた実力派ミュージシャンであり、本作の撮影後、作品にマッチする既成曲を監督が嘱望、楽曲を提供する事で制作チームに加わったものである。

     

    終結する日本映像界のニューカマーたちへ、メジャーメーカー群やベテランクリエイターたちが大きくバックアップ、切なくも儚い父子関係の描写により、観客の持つ日本観、社会観を揺すり、痺れさせるオフビートシネマ。静謐な画面からあふれ出る情熱と、狂おしいほどの少年の憧憬を銀幕に映し出す。